クリニックブログ

『モンスターペアレント』
2024年2月7日

最近息子が初めてアルバイトをするようになりました。

これまで我が家はお小遣い制で、必要ならば親に相談してその都度お金を渡していました。

しかし、アルバイトを始めると

今までの小遣いでは手にしたことない大金が一か月足らずで振り込まれ、

息子はすっかり有頂天になりました。

嬉しくて嬉しくて、あれやこれやとネットでぽちり、肝心な時にお財布はすっからかん。

おこづかい、という限られたお金でやりくりする「節約」は経験済みですが

身に余る現金を前に、己の欲を抑えてこれからに備える「貯金」の感覚が身についてないのです。

私は、給料日が来た日に一定の貯金してから使いなさいと、諭したものの、馬耳東風。

「うんうんわかった」と言った傍からまだお金があるな、と思うと欲しいものをネットで見るとつい買ってしまい、結局使い切ってしまう月末を何か月か繰り返していました。

そこで私は

世の中にはそんな人のための「定期預金」なるものがある、一度やってみては・・と持ち掛けました。

これなら手堅い。衝動的に買い物する癖がつかないうちにと。

本人も納得し、銀行窓口へ行くことになりました。

一応一緒についていくか・・と軽い気持ちで一緒に出掛けました。

私は、息子が「定期預金の口座を開設したい」と窓口にしっかり言ったのを確認したのち、ロビーに。

一人待合のソファに腰をおろし、息子は個人ブースへ。

息子がどう貯金のプランを立てるのか、高見の見物よろしく、自分の時の銀行体験を思い出していました。

後から、どういう体験をしたのか聞いてみよう、お母さんが初めて銀行に行ったときは、銀行の人がいろいろ教えてくれたんだよ。

これは通帳、通帳と印鑑は別に保管、暗証番号は忘れてはいけないし、人に教えてもいけない。通帳の裏に書いてもだめだよって。

もし拾ったり、盗まれたりしたら、お金の在り処を泥棒に教えているようなものでしょって言われて、関心したっけ。

最後に、がんばって貯めてね、って銀行キャラクターのプラスチックの貯金箱とティッシュをもらって、

なんか大人になった気分だったよなぁ・・なんて。

と、すっかり余裕の親心で涼しい顔で雑誌に目を通してのんびり待っておりました。

1冊読み、2冊読み。3冊・・・

あれ。。

なんでこんなに時間がかかっているのか?

いぶかしく思い、抜き足で個室のブースをそっと覗くと、

そこには背中を丸め何かを熱心に書いている息子の後ろ姿が見えました。

「え、何かにサインさせられている?!!」

その後ろ姿にぞっとして、私は見事に親スイッチを押してしまいました。

頭をよぎるのは、どこかの勧誘で何かよからぬものにサインしてしまい、取り返しのつかない契約をした若者の話。

よく理解せず、やってしまってから自己責任、と突き放されて終わりのマネーゲーム。

先ほどまでの親の余裕はどこへやら、

個室ブースへずかずか入って「ちょっと何にサインしてるのっ!」

と、見れば、「定期預金口座開設」ではなく「積み立てニーサご相談申し込み」

何にーさ??

積み立てでもそっちの積み立てかーい

目にしたとたん私はぷちんと切れて、「この子は定期預金を、とはっきりと言ったのになぜニーサの相談にすり替わっているの?」

なんと息子を怒らず、この話を進めていた窓口に食ってかかりました。(←ばか親)

係の人は慌てて、「積み立て定期預金とのことでしたが、もう一つわたくしどもからお積み立てのご提案を・・」

振り向くと息子はのんびりと、「どうして急に株の話になったのかなぁと思ってたけどさ、この人のはなし終わるまで待とうかなと・・・。」

でた。

イエスマン。

ノーと言えない息子!

きっと、そのご提案とやらに

「あ、はい」を連呼して流れに身を任せていた聞いていた結果がこれ。

「いや」とか「だめ」とか言うと、相手に悪いじゃん、と思ってしまう息子。

頭を抱えるわたし。

「息子は定期預金を始める為に手続きに来ました。確かにそう言いましたよ!

銀行の窓口の仕事はそれを遂行すること。

二十歳そこそこの学生を営業成績の食い物にするな!」

と銀行員相手に気色ばんでしまいました。(←もう一度バカ親)

息子は、

初めて稼いだお金にただいま有頂天中。衝動的にモノを買う傾向あり。

だから、親としては、手堅い貯蓄方法を教えたかったのに。

よりによって、元本保証も何もない、クリック一つの衝動で売り買いができてしまう、魑魅魍魎の生き馬の目を抜く世界市場へ、

NOと言えない息子をやり手の営業マンが賭場に追い込もうとしている!

親の目にはそうとしか映りませんでした。

「あ、どうもすみません、なんか。えっと、定期預金にします」

そう言って息子はすぐに手続きを完了して出てきましたが、

「なんか、どうも、すみません。ありがとうございましたぁ~」と、頭を下げ外面よく銀行員を気遣うそぶり。

私としては、「どうもすみませんと謝る必要はなし!ありがとうございましたも言う必要なし!」

と、ぷんぷん怒って帰ってきました。

数十年前に私の若いころにいた、沢山の節操のある大人たちは、いったい何処にいってしまったのか。

投資は余剰資金でやるもの、口座の残高が0円の若者にまで誘い水をかけてくるのか。

世の中が皆で子供をまるごと温かい目で育てよう、というのは、19歳まで。

二十歳を過ぎると、大人は容赦なく牙をむき、他人の思惑の餌食にもなりかねないのだな、と思いました。

「あなたはこれから、すぐ何でもいいよいいよってしないこと!」と言ったら

「お母ちゃんはこれから、すぐに怒らんことね。すぐ怒るんだから。」ですって!

「これ、銀行で送った友達へのラインね」と笑いながらスマホの画面を見せてくれました。

そこには

真っ赤ななまはげのようなスタンプと共に

「かあちゃん、げきおこ」の文字

ったく。

今の若者は何でもすぐ発信しますね。

確かに、大人げなかったかもしれません。

いまごろあの銀行内では、「今日モンスターペアレントが来たよ」と行員の話題になっていることでしょう。

しばらくあの銀行には行けないわ・・・

受付 菊地