クリニックブログ

芸術の秋
2016年10月20日

ここ数年ご無沙汰ですが、数年前までよく、オーケストラの演奏を聴きに行っていました。プロのオーケストラはもちろん、アマチュアのオーケストラの演奏も聴くことがありました。そこで不思議なのが、必ずしも一流と言われているプロのオーケストラの演奏が、感動的で素晴らしいわけではないということです。

プロのオーケストラは、大抵、ホームグラウンドのホールを持っているのですが、ある、二流とは言わないけれど、一流には手が届かないくらいに言われているオーケストラの、ホームグラウンドでの演奏を聴きに行った時のことです。聴きに来ているお客さんは、近所のおじさん、おばさんと言った風の普段着の人が多く、また、レッスン帰りと思われる楽器を持った小学生もかなりいるなど、都心の大ホールでの演奏会とは違う雰囲気がありました。その中で、演奏が始まったのですが、以前、そのオーケストラが違うホールで演奏したのとは全く違う、熱の入った素晴らしい演奏でした。お客さんたちも、もちろん言葉を発するわけではないのですが、“がんばれ~”と応援する雰囲気があり、オーケストラのメンバーもそれに応える、というような感じもありました。

音楽を演奏するというのは、基本的には、技術がかなり必要なのでしょうし、ましてや作曲家が楽譜に示している“思い”などを表現するには、かなり高度な技術と裏打ちされた知識が必要とされるのだと思います。そういう意味では、プロ、その中でも一流のオーケストラの演奏は、技術や知識の面では、他を寄せ付けないものがあるのだと思います。が、技術が足りなくても、その曲が純粋に好きであったり、その曲の示していることに共鳴したり、あるいは、周囲からの温かい励ましがあったり、そんなことが、演奏を、人に感動を与える素晴らしいものにすることがあるのではないかと思います。そういう意味で言うと、アマチュアのオーケストラの演奏もなかなか面白いものがあります。アマチュアは、1曲を半年から一年くらいかけて練習し、演奏することが多いですが、数回の練習で仕上げてしまうプロの演奏とは、また一味も二味も違うものがあります。それは、時間をかけて練習することで、その曲に対する色々な思いが生まれ、それが演奏につながるからなのだと思います。

クラシック音楽、オーケストラの演奏、などというと、少し敷居が高いイメージもあるかもしれませんが、演奏家が曲に寄せる思いや、会場の雰囲気などにも、目を向けると、興味深いことがたくさんあるのではないかと思います。いくつかのオーケストラを聴きに行って、“聴き比べ”なんていうことも、面白いかもしれません。芸術の秋を楽しみたいですね。

 

臨床心理士 磯田

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