戦争の行方
2022年7月7日
今から4か月前のことでした。
息子がいつになく神妙な顔つきで私にスマホの画面を見せてきました。
それは夜の闇に閃光が走り、次の瞬間建物に火花が散り、爆発するウクライナへのミサイル攻撃の動画でした。
「これ、フェイク?じゃない?」
どうやらその日、息子はスマホでロシアとの戦争が始まった第一報を知ったようでした。
フェイク映像でないことを知って息子はロシアに留学している友人に慌てて連絡をとっていました。
文京区にはバレエ学校が多く、お子さんにバレエをお稽古ごとに選ばれるご家庭が多いです。
息子の同級生は、ロシアにバレエ留学をしていました。
息子はあの手この手で連絡を試みたようですが
この時はもうロシア側の情報統制が始まっており、友人と全く繋がらない状態になっていました。
たわいもない会話でも投げかければすぐに異国地の地の友人と冗談を言い合える、そんなネット環境が、当たり前ではなかったこと。
当たり前に過ごしていた今日に、歴史の教科書でしか知らなかったまるで中世のような出来ごとが、現代の自分にも起こり得るのだ、という衝撃が息子をかなりうろたえさせていました。
自宅でスマホを握りしめながら街に戦車が走ったり建物が爆破されたりする映像を見るたびに、『まじかよ・・』と見たこともない顔つきをしていました。
いつもはYouTubeオンリーの息子が珍しく私の横でテレビのニュース映像を見ていました。
大人になるということは、割り切れない状況の矛盾に揉まれること、想定外のことに出くわすこと、その対処を学ぶこと、だと思っていますが、まだあどけなさが残る息子の横顔を見ながら、親としてちくちくと胸が痛みました。
幸いほどなくしてロシアにいる同級生のインスタグラムが見れるようになり、無事安否確認もでき、大人たちの心配とは裏腹に、「ドルカード使えねー」「だよねー」的な子供らしいやりとりも見え、一か月かかって友人は無事帰国しました。
帰国隔離のため2週間ほど日本のホテルに缶詰めになるというおまけの試練はありましたがなにより無事に親元に帰ることができて本当に良かったです。
戦争ってこんな風になってしまうのか・・と親の私も暗澹たる気持ちです。
息子が小さい時、公園デビューのとき先ず初めに教えたのは、おもちゃの取り合いのルール。
ママさんならおなじみの「貸して」「どうぞ」のやりとりです。
その当時、広場でも砂場でも、人の物が欲しい子は必ず「かして」と声をかけ
声をかけられたほうは「どうぞ」する・・というのが流行ってました。
息子が「いやだ」と言おうものなら、親としてママ友の前で必死になって息子に「どうぞ」を強要した覚えがあります(笑)
今となっては「僕は嫌だ」としっかり断ることも、あの時教えておけば良かったのでは・・と思い返すこともしばしばです。
息子はロシアから同級生が帰国してから、もう戦争の情報にあまり興味も持たず、また、平穏な学生生活を送っています。
まさか現代で起こるとは思ってなかった戦争のゆくえ
今、息子の目にはどう映っているのでしょうか。
大人になって振り返った時、どのように思い出すのでしょうか。
願わくは
思ってもみなかったことが起こる中でのたくさんの矛盾を
人がどのように知恵を絞って切りぬけて前に進むのか、よく見てよく聞いて、
しっかり成長してほしいものだな、と思います。
受付 菊地