クリニックブログ

15のこころ
2017年4月28日

青空に、新緑も映える季節となりました。

4月スタートの新生活から始まり、ここにきてゴールデンウィークと、ほっと一息つくかな、といったことろでしょうか。

最近、わが子とパソコンの動画を見ながら、たわいもない話でゲラゲラと笑っていた折、アンジェラ・アキの「手紙~拝啓 15の君へ~」が流れてきました。

それを聞きながら、私は胸の中でこっそり「なんだって暗い歌だなぁ。。」と思っていた矢先でした。

急に子どもが「これは自分の胸の中、そのまんまだね」と言ったのです。

びっくりして思わず顔をみると、子どもは先ほどとうってかわって、今まで見せたことのない神妙な顔つきをしていました。

 

この歌は、合唱コンクールの課題曲にもなる、有名な曲です。

おなじみな方も多いと思います。

 

15の僕には、誰にも話せない悩みがあるのです。

今、負けそうで、泣きそうで、消えてしまいそうな僕は

誰の言葉を信じて生きればいいの

ひとつしかないこの胸が何度もばらばらに割れて

苦しい中で今を生きている。

自分とは何でどこへ向かうべきか、問い続けていれば見えてくる。

 

これを、そのまんまだ、と言って、今、隣で見たこともない顔つきで目を伏せているわが子に、私は心底驚いてしまいました。

ついさっきまで、いつもと同じ大口をあけてくだらないことに笑っていたこどもが、いつの間にこんな光と影を持つ若者になったのだろう、と。

わたしの方が、もうこの歌の内容に迫りきれないほどに手垢のついた大人になり、繊細な胸の内もおばちゃんパワーで笑い飛ばすだけの手腕を身につけ、もはや、暗い歌・・と通り過ぎるだけの、鈍感な大人なのでした。

 

思春期はささいなことで反抗もし、確かに親にとっては腹の立つ、頭にくることも多い、面倒な時期です。

大人ならではの経験と知識で、子どもの行く手にあれやこれやと口出ししてしまいがちです。

ですがこの瞬間、私は大人が子供をあなどってはいけないな、とドキッとさせられました。

一緒に暮らしていても、子どもは広大な子どもの世界にひとりで住んでいるのです。

それは、かわいそうなわけではなく、これからをかたち造る、とても大事な時期を過ごしているのだと感じます。

 

不来方(こずかた)のお城の草に寝ころびて

空に吸われし

15の心

 

これは石川啄木の歌です。

今も昔も変わらずに、この年頃は極めて繊細な、そして大事なことを自分の力で学ぶ時なのですね。

思えば、私たち大人も、かつてはそうだったはずでした。

今は子供を見守る大人側に回りましたが、改めて、きちんと心に留めて接したいものだと痛感しました。

 

受付 菊地